こんにちは、風馬(ふうま)です。
田舎で病院薬剤師をしています。
先日、母がバセドウ病と診断された日に『【薬剤師監修】母がバセドウ病になったので、本気でまとめてみた。』という記事を書きました。
(↑の記事の要約)
バセドウ病と診断された人向けに
- そもそもバセドウ病ってどんな病気?
- どんな治療法がある?
- 日常で気をつけることは?
といった、バセドウ病全般について解説しています。
もしバセドウ病についての基礎知識がないならば、先に上記記事(【薬剤師監修】母がバセドウ病になったので、本気でまとめてみた。)を読んだほうが、より分かりやすいと思います。
本記事ではバセドウ病の基礎知識があることを前提に、薬物療法だけにフォーカスして
副作用とか、注意すべきことも知りたい。
という疑問に、できるだけ詳細に答えます。
正しい知識を身につけて、適切な薬物療法を行っていきましょう!
『入門!甲状腺疾患: 臨床に役立つ解剖生理から薬物治療までの基本(レシピプラス Vol.17 No.2)』
『薬効別 服薬指導マニュアル 第9版』
もくじ
おさらい:甲状腺ホルモンの特徴
詳細は『【薬剤師監修】母がバセドウ病になったので、本気でまとめてみた。』という記事で解説しています。
さらに、薬物治療を説明するために必要な追加情報は以下
- 甲状腺ホルモンは、薬によって分泌を抑えたり、補ったりできる。
→どちらも飲み薬で可能。 - 甲状腺ホルモンには2種類ある。
→T4,T3と呼ばれる。 - 甲状腺から分泌されるのは主にT4。
→量は多いが、ホルモンとしての力は弱め。 - T4は全身で代謝されて、T3へと徐々に変化する。
→T3は少量だが、ホルモンとしての力は強い。
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抗甲状腺薬:治療の第一選択
抗甲状腺薬は「甲状腺ホルモンが作られすぎないようにして、過剰な新陳代謝を抑える薬」で、2種類あります。
- メルカゾール錠(チアマゾール)
- プロパジール錠・チウラジール錠(プロピルチオウラシル)
基本的に、どちらかが治療の中心ポジションとなります。
抗甲状腺薬の特徴
- メルカゾール錠(チアマゾール)
- プロパジール錠・チウラジール錠(プロピルチオウラシル)
に共通する特徴を解説します。
ざっくりまとめると
- 効果が出るまで、1ヶ月ほどかかる
- だんだん薬を減らしていって、数年間は治療が必要
- 無顆粒球症など怖い副作用があるが、初期症状に気をつければ対処可能
- 1回飲み忘れたくらいなら、治療効果には問題ない
という感じ。
詳しく見ていきましょう。
抗甲状腺薬を飲み始めて、いつぐらいに効果が出る?
効果が実感できるのは、薬を1ヶ月ほど続けてからです。
それまでは根気強く、指示通りに飲みましょう。
[効果が現れるのが遅い理由]
甲状腺にはおよそ1か月分の甲状腺ホルモンが貯蔵されているから。
抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを作られすぎないようにしても、最初から貯まっているホルモンには何の影響もありません。
なので甲状腺ホルモンの量が減って、症状が改善されてくるまでにはある程度時間がかかります。
抗甲状腺薬での治療に必要な期間は?
治療開始からだんだん薬を減らしていって、少量を3年くらい継続する必要があります。
急に飲むのをやめると、バセドウ病が必ず再発します。
症状がなくなるのは薬を飲んでいるからで、決して治ったわけではありません。
勝手な判断で、薬を中止しないことが大切です。
抗甲状腺薬で、注意すべき副作用は?
いくつか怖い副作用もありますが、初期症状を知っていれば対処可能です。
全く無関心なのも困りますが、必要以上に怖がる必要はありません。
どんな副作用があるかは長年にわたって、たくさんの人がその薬で治療してきた歴史から、ほぼ明らかになっています。
ここでは
- 無顆粒球症(免疫の低下)
- 肝機能障害(肝臓へのダメージ)
- 抗甲状腺薬へのアレルギー(皮膚のブツブツ・蕁麻疹)
を取り上げます。
1:『無顆粒球症』
顆粒球とは、おおざっぱに言えば白血球のこと。
つまり無顆粒球症とは「体を細菌・ウイルスから守ってくれる白血球(好中球)が異常に低くなる」という副作用です。
より簡単に言えば、「体の免疫力が下がる」ということですね。
[初期症状]熱が出た・のどが痛い・体がだるい
[対処方法]原因になった薬を中止し、別の薬に変更する。(すぐ、主治医に判断してもらうこと!)
抗甲状腺薬を飲み始めた人に、無顆粒球症が起きていないか注意して見ていくのは医療者にとっては常識です。
なので、薬を飲み始めてから最初の2ヶ月間、2週間に1回血液検査を行います。
この副作用によって死亡した人もいるので、かなり重大な注意点なんです。
でも、逆に言えばこの副作用が起きる可能性を十分に想定された上で治療が行われています。
なので、薬を飲む本人ができることは
- 無顆粒球症を恐れ過ぎず、薬を続けること。
- 初期症状を知って、疑わしい症状が出たときはすぐに診てもらうこと。
これだけです。
2:『肝機能障害(肝臓へのダメージ)』
飲み始めて2週間〜3ヶ月以内に起きることがあります。
[初期症状]皮膚、白目、尿が黄色くなる・吐き気・食欲がない・体がだるい
[対処方法]原因になった薬を中止し、別の薬に変更する。
3:『抗甲状腺薬へのアレルギー(皮膚のブツブツ・蕁麻疹)』
飲みだして2-3週間以内に起きることがあります。
[初期症状]かゆみ
[対処方法]症状が軽いなら、アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬)で対応可能。
※もし重症なら、原因になった薬を中止し、別の薬に変更する。
抗甲状腺薬を飲み忘れたとき、どうすればいい?
基本は、思い出した時にすぐ飲めばOKです。
※次の服用時間が近いときはスキップする。
2回分を1度に飲まないこと。
抗甲状腺薬は、ちょっと飲む時間が空いても効果にはほとんど影響しません。
1回忘れた程度なら、神経質にならなくても大丈夫です。
次からは忘れないように、
- 薬を目につくところに置いたり
- スマホでアラームをセットしたり
薬を飲み忘れないための工夫をしてみましょう。
メルカゾール錠(チアマゾール) ←第一選択薬
バセドウ病治療の中心となる薬です。
メルカゾールを飲むタイミング
☆量が多くても、飲むのは1日1回
☆朝・昼・夕などのタイミングはいつでもOK(効果は変わらない)
☆食後じゃなくてもOK
1日あたりの薬の量に関係なく、1日1回飲む薬です。
甲状腺に濃縮されるので、1回飲むと24時間以上効果が続く。
朝・昼・夕のいつ飲むかで、効果に違いはありません。
「主治医の処方が朝食後だけど、朝は飲み忘れることが多い」という場合、忘れにくい他のタイミングでもOKです。
また、効果面で食事の影響も特にありません。
副作用に薬による胃腸への障害もないので、食後・食前・空腹時のいつでもOK!
メルカゾールを飲む量
☆重症なら6錠、普通なら3錠から開始
☆診察を受けながら、1錠ずつ減らしていく
☆1日おきに1錠飲むのを半年ほど続けたら、薬を終了できるかも
メルカゾールは1錠に5mg含まれています。
(※2020年8月に、1錠2.5mgの錠剤が新しく承認されました。)
飲む量としては
- 症状が重い:30mg(6錠)
- 症状が普通:15mg(3錠)
という感じ。
たくさん飲むほど副作用も起きやすくなるから、できるだけ少なめでコントロールできるのが理想。
たくさん飲めば病気がより良くなるわけではありません。
2〜4週間ごとに診察を受けて、1〜2錠ずつ減らしていきます。(※症状が悪化したら増やすこともある。)
最も少ない量としては、1日おきに1錠飲むこと。(2.5mg錠なら、毎日飲む。)
これを半年ほど続けて、ホルモンが正常なら薬を終了できるかも知れません。
逆に言えば、この『最小量での薬の継続』を達成することが薬を中止できる目安になります。
なので、症状がなくても指示通り継続するのが、寛解への近道。
メルカゾールの効果が出るまで
飲み始めてから効果が出るまでには、早くても2〜4週間かかります。
2〜3ヵ月継続すると、症状が改善してきます。
この時に「治った!」と自己判断すると危険。
- 飲まなくても調子がいいと勘違いして
- 薬を勝手に飲まなくなる。
- 甲状腺ホルモンは薬で抑えられているだけなので、
- 薬を中断したら、ほぼ確実に再発する。
再発すると、また減量前の薬の量に逆戻りします。
結果、治療が長引くことになります。
重要な、注意すべき副作用
『無顆粒球症(顆粒球減少症)』
体を微生物から守る好中球が減るので、感染しやすくなる副作用です。
重症になると、回復するまで無菌室にいなければならないことも。
薬を開始して最初の2ヵ月で起きやすい(ほとんど3ヵ月以内に起きる)
→最初の2ヵ月は、2週間ごとの血液検査が推奨されています。
ただ、発症は突然なので血液検査をしているからと言って安心はできません。
「38℃以上の発熱」「のどの痛み」などの感染の兆候に気付いたら、すぐに受診しましょう。
対処方法は、メルカゾールを中止して他の薬に変更することになると思います。
メルカゾールの1日の量が5〜15mg(1〜3錠)と少ないほど、この副作用は起きにくいことが分かっています。
また、無顆粒球症のリスクはもう一つの抗甲状腺薬のプロピルチオウラシルよりも低いです。
『肝機能障害(肝臓へのダメージ)』
薬を飲み始めて2〜3ヵ月で起きやすい副作用。
重症化するのは0.1〜0.2%くらいの確率です。
初期症状は、だるさ・黄疸・食欲不振など。
対処は、メルカゾールの中止→無機ヨウ素へ切り替えをして、肝臓の機能が安定したら薬以外の治療法を選ぶことになります。
初期症状の時点で薬を中止して、ちゃんと対処すれば重篤にはなりません。
なので、副作用を怖がらずにきちんと内服をすることが重要です。
初期症状をしっかり把握して、メルカゾールは自分の判断で中断・調節しないこと!
他に、『関節痛』『かゆみ』『発疹』などの副作用も起きる可能性があります。
プロパジール・チウラジール(プロピルチオウラシル) ←第二選択薬
メルカゾール錠が使えない人に、使われることが多い薬です。
あまりメジャーではないので、さらっと解説するに留めます。
[メルカゾールが使えない人]
- 妊婦・妊娠予定の人
- メルカゾールでアレルギー・副作用が出た人
メルカゾールは胎児の奇形の原因になるので、妊娠希望の人はプロピルチオウラシルを使います。
(※メルカゾールの方が効果が出るまでの期間が短く、副作用(無顆粒球症)のリスクが低いので、全体的にプロピルチオウラシルよりも優れています。)
プロピルチオウラシルを飲むタイミング
飲んでから効果が続くのは12〜24時間なので、1日2〜4回飲まないといけません。
プロピルチオウラシルの効果が出るまで
だいたい14〜28日で効果が出てきます。
副作用の特徴
無顆粒球症はメルカゾールより起きやすいため、要注意。
一方、皮膚の副作用はメルカゾールより少ないです。
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その他の治療薬
ヨウ化カリウム丸(KI)
ヨウ化カリウム丸は、治療の初期に抗甲状腺薬と併用して使える
簡単に言えば、抗甲状腺薬とは違う仕組みで、より早く効果が出る薬です。
効果が速やかに出て副作用もほぼないので、治療の最初の頃に抗甲状腺薬と併用することがあります。
(あくまで補助的なポジションですが、抗甲状腺薬の量を減らして副作用を軽減できます。)
無機ヨウ素を多量に摂取すると、甲状腺ホルモンの合成が抑制されます。
[処方例]
ヨウ化カリウム丸50mg 1回1丸 1日1回朝食後 5日分
(※初診時に14日分のメルカゾール or プロパジールと一緒に処方されるイメージ。)
ヨウ化カリウム丸は、抗甲状腺薬の代わりにも使える
抗甲状腺薬は怖い副作用があるので、軽症ならヨウ化カリウム丸だけでもOKなことも。
また、抗甲状腺薬で副作用が起きて、使えないときの選択肢にもなります。
ヨウ化カリウム丸の量の調節は難しい
抗甲状腺薬と違って、薬の量を微調整するのは難しいです。
細かく量を調節しても甲状腺の機能と連動しないので、ヨウ化カリウム丸の減量・中止の基準はかなり曖昧です。
ヨウ化カリウム丸の注意すべき点『二次無効』
2週間以上使用したら、逆に甲状腺機能が亢進することがあるので注意が必要。
これを二次無効(エスケープ現象)と言います。
つまり、治療の確実性・継続性に難があるんですね。
なので結局は、メルカゾールが一番なことは変わりません。
炭酸リチウム
本来は、躁病(うつ病の反対バージョン)の治療薬です。
なので、バセドウ薬の治療で使うなら医療保険は使えません。
でも、炭酸リチウムには甲状腺ホルモンの分泌を抑制する効果があります。
実際に活用する場面は
- 症状がヤバいとき、抗甲状腺薬・ヨウ化カリウムに追加する
- 放射性ヨウ素内用療法(後述)の効果増強目的
という、おまけ程度ですね。
症状改善に使う薬
バセドウ薬自体の治療ではなく、あくまで症状を抑える目的で使う薬もあります。
ここでは
- βブロッカー『インデラル錠(プロプラノロール)』
- 漢方薬
・炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
を紹介します。
βブロッカー『インデラル錠(プロプラノロール)』
使用目的は、以下の症状を抑えることで
- 心臓の機能が亢進することによる動悸
- 手指振戦(ふるえ)
甲状腺ホルモンは交感神経を高ぶらせてしまうので動悸・ふるえなどの症状が現れます。この交感神経をオンにするスイッチの1つにβ(ベータ)受容体があります。
βブロッカーであるインデラル錠(成分:プロプラノロール)はβ受容体に蓋をすることで、交感神経がオンになりにくくして、各症状を軽くしてくれます。
とはいえ、あくまで表面的な症状を抑えるだけなので、バセドウ病の根本的な解決には繋がりません。
なので、抗甲状腺薬やヨウ化カリウムの効果が出るまでの間に、症状を改善させる目的で使われます。
逆に言えば、症状が気にならなければ使わなくてもOKですね。
[処方例1](症状がある時に使う)
インデラル錠10mg 動悸時1回1錠 10回分
[処方例2](初期に症状がひどい場合)
インデラル錠10mg 1回1錠 1日3回朝昼夕食後 14日分
※インデラルに限らず、βブロッカーには他にも「テノーミン錠(アテノロール)」など種類はいくつかあります。
バセドウ病の症状緩和に使える漢方薬
こちらも治療薬ではなく、あくまで症状を抑える目的で使われます。
炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
- 栄養不良・脱水の改善
- 動機も抑える
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- ストレス・不安の改善
- 動機も抑える
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
易怒性などの精神的興奮・イライラの改善
補充療法(甲状腺・副甲状腺)
甲状腺ホルモンは抗甲状腺薬で抑えるだけでなく、薬によって補充することも可能です。いわゆる甲状腺ホルモン薬ですね。
また甲状腺の裏には、副甲状腺という血中のカルシウム調節に重要な働きをする組織があります。
副甲状腺から出る副甲状腺ホルモンの分泌が手術後に低下してしまった場合も、その働きを補充するような薬を使います。
甲状腺ホルモン薬による補充療法
甲状腺ホルモン薬として一番よく使われているのは「チラーヂンS(レボチロキシン)」という化学合成のT4製剤です。
バセドウ病を
- 抗甲状腺薬で治療している時
- 手術・放射線で治療した後
のどちらも、チラーヂンSを使うことがあります。
抗甲状腺薬で治療中の、甲状腺ホルモン補充療法『Block & Replacement Therapy』
「抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを抑えているのに、なんで甲状腺ホルモンを薬で補充するの?」
という疑問がでる、一見よくわからない治療法です。
でも、抗甲状腺薬に甲状腺ホルモン薬を追加するのは『Block & Replacement Therapy』という、れっきとした正しい治療法なんです。
この治療法は抗甲状腺薬を増減したら甲状腺機能が変わりすぎてしまうときに、甲状腺機能を安定させる目的でチラーヂンS(レボチロキシン)を上乗せします。
具体的には、甲状腺の機能を抑え込める量のメルカゾール(15mg/日)を、正常の甲状腺機能を維持するのに必要なチラーヂンSと併用します。
抗甲状腺薬を治療の途中でやめるとバセドウ病が再燃してしまって、これまでの治療がふりだしに戻ってしまいます。
だから、甲状腺の機能が下がりすぎても抗甲状腺薬をやめることはできないんですね。
こういう時に、甲状腺ホルモン薬で補充をしてあげるわけです。
手術後・放射線治療後の甲状腺ホルモン薬による補充療法
バセドウ病で以下のような人には、手術で甲状腺を摘出します。
- 抗甲状腺薬で副作用が起きて使用できなくなった人
- 抗甲状腺薬ではコントロールできない若い人
- 甲状腺の腫瘍が原因の人
- 短期間の治療を強く希望する人
通常は、甲状腺亜全摘術(2/3以上の摘出)が行われます。
手術による治療のデメリットは、術後に甲状腺機能低下を起こしやすいこと。
とはいえ、これは手術後に再発させないためにはある程度は仕方ありません。
術後に低下した甲状腺機能が回復するまでは、甲状腺ホルモン薬での甲状腺ホルモン補充療法が必要になります。
[術後の処方例]
- 甲状腺半切術:補充は必要ないことが多い。
→必要なら、チラーヂンS 25-50μg 1日1回朝食後 - 甲状腺亜全摘術:ほぼ補充が必要。
→チラーヂンS 50-100μg 1日1回朝食後 - 甲状腺全摘術:補充が必須。
→チラーヂンS 100-150μg 1日1回朝食後
副甲状腺ホルモンの機能を補うための薬
甲状腺の手術後、10%くらいの人は副甲状腺の機能も低下します。
(手術で副甲状腺への血流が悪くなることが原因。)
副甲状腺とは?
副甲状腺は、甲状腺の後ろに接するように存在しています。(名前は似ていますが、全く別の臓器です。)
通常4つあって、大きさは米粒ほど。
主な働きは、副甲状腺ホルモンを作ることです、
副甲状腺ホルモンとは?
副甲状腺ホルモンには
- 骨→血中にカルシウムを放出させる働き
- ビタミンDを活性化して、腸からのカルシウム吸収を促進する働き
があります。
つまり、血中のカルシウム濃度を上げる働きですね。
副甲状腺ホルモンが不足→低カルシウム血症に。
副甲状腺ホルモンの分泌が温存されないと、血中のカルシウム濃度を上げる働きが不足します。
そうすると、低カルシウム血症になってテタニーが起きることも。
『テタニー』とは
血液中のカルシウム濃度が低下して、末梢神経の興奮性が高まり、筋肉の持続的な硬直をきたすもの。
口の周りや手足の先端のしびれ・違和感を伴うことがよくあります。
(テタニー – 公益社団法人 鳥取県医師会 – 日本医師会より)
他にも、けいれん・呼吸困難・精神症状(不安など)が起きることがあります。
副甲状腺ホルモンが不足するのはどんな術後?
副甲状腺が最低2つ残っていれば、副甲状腺ホルモンの分泌量低下が問題になることは少ないです。
なので、甲状腺半切術なら大丈夫ですね。
一方、甲状腺亜全摘術・甲状腺全摘術なら補充療法が必要になります。
ただ、甲状腺ホルモンとは違って副甲状腺ホルモンを直接補充する薬は使いません。
(副甲状腺ホルモンの注射薬は、骨粗鬆症の治療に使われています。)
血中のカルシウム濃度が低下しなければOKなので以下の薬剤を主に使います。
『活性型ビタミンD3製剤』
副甲状腺ホルモン不足を補う治療の中心ポジションがこの薬です。
副甲状腺ホルモンの働きの1つに、ビタミンDの活性化があると解説しました。
『活性型ビタミンD3製剤』は、既に活性化されたビタミンDの薬なので副甲状腺の機能が落ちていても十分に効かせることが可能になります。
効果は普通のビタミンDとほぼ変わらず
- 小腸からのカルシウム吸収アップ
- 腎臓でカルシウムが捨てられすぎないようにする
という感じ。
[処方例]
アルファロール(アルファカルシドール) 0.5μg 1日1回朝食後
※1-4μg/日 のことも。
カルシウム製剤(乳酸カルシウム水和物)
その名の通り、カルシウムそのものを補充するための薬です。
手術後早い時期に併用で使われることが多く、その後はしびれがあったら続ける程度。あくまで、補助的なポジションですね。
なぜずっと続けて使わないかというと、副作用で高カルシウム血症・尿症が起きやすいからです。
『高カルシウム血症の症状』
食欲がない・吐き気・疲れた感じ・口が渇く・便秘。
重症化で意識障害に至ることも。
このように、たかだかカルシウムの濃度が上がるだけでも重症になれば意識を失うこともあります。
なので、カルシウム製剤を続けて飲んでいる間は高カルシウム血症に要注意なんですね。
[処方例]
乳石錠500mg 1回2〜3錠(1〜1.5g) 1日3回朝昼夕食後
まとめ
以上、バセドウ病に使われる治療薬をかなり網羅的に解説してきました。
- 治療本体の『抗甲状腺薬』
- サブで使われることのある『無機ヨウ素』『炭酸リチウム』
- 症状改善に使う『βブロッカー』『漢方薬』
- 甲状腺ホルモンの補充に使う『甲状腺ホルモン薬』
- 副甲状腺ホルモンの機能を補うために使う『活性型ビタミンD3製剤』『カルシウム製剤』
この記事で、自分が飲んでいる薬をより深く理解して治療継続のモチベーションアップに繋がれば幸いです。
また、今は飲んでいないけど気になった薬があったなら、決して自己判断で取り寄せたりせず、主治医に相談するようにして下さいね。
『入門!甲状腺疾患: 臨床に役立つ解剖生理から薬物治療までの基本(レシピプラス Vol.17 No.2)』
『薬効別 服薬指導マニュアル 第9版』
最後まで読んでくださってありがとうございました。
バセドウ病の寛解目指して、ゆるく頑張っていきましょう!