なにかしらの大会・タイム向上を目指して水泳に取り組んでいて
- プールでの練習に加えて、陸トレはするべき?
- やるとすれば、どんなメニューがいいの?
って疑問を持つ人には、この本↓
『スイミング解剖学』が超オススメです。
もくじ
この本の信頼性(オリンピック級です!)
著者はアメリカ人のイアン・マクロードさん。
- 北京オリンピック(2008)に、アメリカのメディカルスタッフとして帯同
- バージニア大学・アリゾナ州立大学のアスレティックトレーナーを務める
- アメリカの水泳連盟のゴールドスタンダードアワード(最高に名誉ある賞)の受賞歴あり
- 数多くの一流選手に、ドライランドトレーニング指導を行っている
という、世界屈指の陸トレ指導者です。
その証拠にアメリカの水泳連盟からも推薦されていて、以下のように世界一になった選手も推薦文を寄せています。
『この本は、水泳のパフォーマンス向上のために鍛えるべき筋肉を覗きみることができ、そのためのエクササイズを記載している。この本は、すべての水泳選手にとっての必需品である』
―Jason Lezak
北京オリンピック:100m自由形3位、4×100mリレー優勝(世界記録)、4×100mメドレーリレー優勝(世界記録)
『水泳に関して最高の専門的知識を持つ一人であるイアン・マクロードは、本書の中で水中と陸上、両方でどのようにトレーニングしたらよいかを示しており、競泳とかかわるすべての人にとって重要な情報源を提供してくれるだろう』
―Keenan Robinson
ミシガン大学水泳チームアスレティックトレーナー
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この記事を書いてる人(ちょっと頑張ってる市民スイマーレベル)
僕は高校まで水泳部、現在は普通のサラリーマン(薬剤師)をやっています。
(著者たちの紹介の後だと、経歴がショボすぎますね…w)
社会人になってからは、趣味でOWS(オープンウォータースイミング、海など自然環境で行われる長距離の水泳レース)の大会に出ています。
僕の自己ベスト
- 50m 自由形(短水路):25.00秒
- 1,500m OWS:26分30秒ほど
過去、ほぼ陸トレをしてこなかったのですが『スイミング解剖学』の内容を実践するようになって
- プール練習での身のこなしが軽くなった
- 心肺機能は余裕でも、筋肉が疲れてフォームが乱れなくなった
という効果がありました。
著者は世界トップレベルの選手の指導者ですが、僕みたいな市民スイマーレベルでも超有用な内容が満載です!
推薦文にもあった “すべての水泳選手にとっての必需品” ってのも、納得ですね。
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どんな内容が書いてある?
泳ぎだけでなく、“競泳” に必要な能力を高めるための陸トレメニューが書いてあります。
具体的には、
- 力強いスタート
- 速い泳ぎ(もちろん4泳法ごと)
- 爆発的なターン
という、スタートからゴールまでのパフォーマンス改善に役立つ陸トレが、74種類も解説されています。
各エクササイズは見開きで完結していて、解剖学的なカラーのイラストもあるので分かりやすいですね。
※画像はAmazonより。
また、
- 筋力の高め方
- 泳ぎの効率化
にも触れられつつ、上記の画像はバーベルを使ったトレーニングが紹介されていますが
- 自重
- ウェイト
- マシン
- チューブ
など、豊富なバリエーションのトレーニングメニューがあるので、自分の環境に合う陸トレが必ず見つかるはず。
分かるようになること:筋肉-陸トレ-パフォーマンスの繋がり
イラストによる解説で
- スタート・ターン・4泳法で使う筋肉群
- それらを鍛える各エクササイズと、水泳のパフォーマンスの繋がり
これらが分かるのに加えて
- 泳ぎのフォーム改善
- 水泳によるケガの予防
のために鍛えるべき身体の部位・行うべきエクササイズの理解にも役立ちます。
対象者:すべてのスイマー
短距離~長距離(50m自由形~OWS・トライアスロン)まで、何かしらタイム・レースを目標にしているすべてのスイマーにとって、確実に役に立ちます。
- 泳ぎ込みだけじゃパフォーマンスが伸び悩んでいる
- 筋トレノウハウは筋肥大のことばかりで、水泳に役立つ情報が少ない
- 自己流で陸トレをしてるけど、本当に水泳に役立つのか不安
こんな人たちに『スイミング解剖学』は、目標達成のための準備をした上でレースを迎えることを保証してくれます。
僕が特に勉強になった内容の抜粋7選
最後に、本書で目からウロコが落ちる思いをしたポイントを7つほど紹介して終わりにします。
※転載にならないように、だいぶざっくりした説明になってます。
詳しく知りたい方はぜひ購入して読んでみてくださいね!
[1]筋の不均衡(アンバランス)について
プールで泳ぐだけの練習だと、筋の不均衡(アンバランス)が生じてしまいます。
なぜなら、小さな筋群(僧帽筋中部下部・菱形筋など:肩甲骨を安定させる筋肉)より大きな筋肉(広背筋・大胸筋など)が発達しすぎてしまうから。
このような筋のアンバランスは、
- 筋力
- 柔軟性
- 姿勢
など、あらゆるアンバランスを招き、ケガのしやすさに繋がります。
だから、スイマーも陸トレが大切なんですね!
[2]柔軟性トレーニング(ストレッチ)について
筋のアンバランスを防ぐために、陸トレでも柔軟性トレーニング(ストレッチ)が重要です。
ストレッチは2種類(動的・静的)の使い分けがポイント
- 動的ストレッチ:準備運動として効果的
- 静的ストレッチ:陸トレの最後に行うことで、固くなった筋肉を柔軟にできる
- 動的ストレッチ
- メインメニュー(陸トレ)
- 静的ストレッチ
の順に行うことで、筋のアンバランスを防ぎ、ケガ予防に!
[3]エクササイズ選びの考え方について
陸トレメニューを組むにあたって、トレーニングの目的が『移転』『分離』のどちらかを考える方法があります。
『移転』とは
泳ぐための筋力強化を行うこと。
- バランスボールをつかってストリームラインを作るエクササイズ
- ラットプルダウン
↑広背筋(ストロークで腕を動かす主要な筋)がターゲット
『分離』とは
自分の体で相対的に弱い部分を強化すること。
- 筋のアンバランスを是正する
- ケガ予防に役立つ部位を補強する
- 泳ぐフォームなどが原因で、弱くなっている部分の強化
ふつう陸トレというと『移転』のことしか考えていないと思います。
でも、『分離』を目的にした陸トレを実践していくのが、僕みたいなアマチュアスイマーにとっても重要なんですね。(特にケガ予防)
[4]エクササイズ(メインメニュー)の順番について
陸トレの効果を最大化するには、エクササイズの順番が大切。
これは筋トレの考え方とほぼ同じになりますが
- ウォーミングアップ
↑10分程度:動的ストレッチ・有酸素運動(低強度) - ケガ予防・体幹トレーニング
- メインエクササイズ
- 静的ストレッチ
という流れがベストです。
また、メインエクササイズは
- 全身エクササイズ
- 多関節エクササイズ
- 単関節のエクササイズ
と、大きな筋群→小さな筋群へとステップダウンしながら鍛えるとより効率的です。
プール練習で例えるなら、メインスイムの前に全力キック練習は避けるってイメージ。
脚が疲労困憊な状態でメインスイムをしても、得られる効果が制限されてしまいますよね。
[5]エクササイズの組み合わせ・比率について
一般的なエクササイズは、ざっくり『押す(プッシュ系)』『引く(プル系)』の2種類に分けられます。
これらをどう組み合わせれば良いのでしょうか?
例えば以下のように、たいていのエクササイズは互いに拮抗筋になっています。
- 押す:プッシュアップ(大胸筋・上腕三頭筋)
- 引く:プルアップ→(広背筋・上腕二頭筋)
これらをセットで行うと、トレーニング中に拮抗筋群が回復できるので、より効率的です。
肘の単関節運動は【のばす:まげる=2:1】にすべき
泳ぐときの筋肉の活動量が、肘をのばす(上腕三頭筋)>まげる(上腕二頭筋,上腕筋)だから。
大きな筋肉は【プル系:プッシュ系=2:1】にすべき
水泳で使う大きな筋肉は
- プル系:広背筋
- プッシュ系:大胸筋
ですが、大胸筋は泳ぐときに大きく使われているので、相対的に弱い部位になりません。
筋のアンバランスを防ぐ(大胸筋が発達しすぎないようにする)には、プル系(広背筋):プッシュ系(大胸筋)=2:1 にすべきです。
[6]エクササイズの回数・強度・セット数について
これも筋トレノウハウでよく解説されていることですが、回数を増やすと強度は軽くなります。
例えば、同じ種目でも限界がくるのが18kg×8回・11kg×15回みたいになるってこと。
回数・強度を調節することで、トレーニング目的を変えれます。
水泳のためにトレーニングするなら、↓くらいが目安
- 筋持久力:15~20回×2セット
- 筋力:5~8回×4~5セット
扱う重量は、最終セットのラスト2~3回で鍛えている筋群が疲労を感じるくらいに設定しましょう。
[7]エクササイズを効かせるコツ:肩甲骨・体幹の固定
- 腕(特に肩の関節)を動かすトレーニング→肩甲骨
- すべてのトレーニング→体幹
を固定すると、狙ったところに効かせられるようになります。
肩甲骨を固定するには
肩甲骨を後ろ・下の方に挟み込んで安定化させる。
肩を上にすくめないように注意。
肩甲骨が上がっていると、効く部位が僧帽筋の下部線維→上部線維に変わってしまう。
※上部線維はたいていのスイマーが発達しすぎな部位なので、筋のアンバランスにつながります。
体幹を固定するには
腹筋・背筋・お尻の筋肉を同時に収縮させて体幹を固定すると
- トレーニングで狙った筋群がより力を発揮しやすくなる
- ケガを予防できる
というようなメリットがあります。
腰はニュートラルな位置になるようにします。
あおむけに寝て練習するとコツが掴みやすいかも!
まとめ
水泳の陸トレをどうすればいいか分からない人は、とりあえず『スイミング解剖学』を読めばOK
著者はオリンピック級の指導者ですが、僕みたいな市民スイマーでも役立つ情報が満載でした。
- 自己ベストを0.01秒でも更新したい
- マスターズなどの大会で上位を狙いたい
という思いを持つすべてのスイマーにとって、この本は必需品です。